どこに差別点をつくりますか?

〜商品開発の発想

松岡宏行/スイスイ社取締役
2000 Spring

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モノがよければ必ず売れる?

長年の主婦の夢の商品であった「食器洗い機」。水も洗剤も節約でき、毎日のあの煩雑な洗い物から解放してくれる画期的な商品が、こんなに手頃な値段になったのに、まだ買わない人がいるのはどうしてでしょうか。
商品自体がどんなにすぐれていても、値段や性能とは別の理由で買ってもらえない商品があります。一方で機能的には何の役にも立たない場所ふさぎの商品が、どこか心の琴線にふれたために、大変な人気を呼ぶことがあります。
突然あらわれた電子愛玩ロボット。画期的な商品は、市場調査で消費者の「ニーズ」を読んで生まれるものではありません。企業が、その企業の将来の柱となりうる新しい商品を生み出そうとするとき、どんなメンタリティーでいなければならないでしょうか。

値段が安ければ必ず売れる?

品質とコストが、競争力のポイントであることはいうまでもないことです。品質とコストのバランスをどこに保つべきか。多種多様なものがあふれかえる市場の中で、自社の製品をどこに位置づけるのか。個別の商品のみならず、自社のブランド位置をどこに置こうとしているか。

低価格の衣料品ブランドでぐんぐん伸びている会社があります。価格だけならば、他の企業でも同等レベルでやっているところがあるのに、どうしてこの会社だけ、業績が群を抜いているのでしょうか?
価格だけを訴求するのではなく、デザインやブランドづくりに独自の戦略をもち、そこからベーシックな商品展開をしていること、売れるタイミングを確実にとらえる供給体制を作ったことなど、勝ち組企業の特徴を読みとることができます。

信頼と感性のマーケティング

十分に成熟し、もはや機能で差別化できない商品群で競争力を保つには、低コストで供給するという方向があります。市場がグローバル化するなか外国製品と価格競争を強いられるのはやむを得ないかもしれません。
他方、商品の品質やテイストにおいて、消費者の満足感を上げる方向もあります。国産車よりも割高とわかっていながら、ヨーロッパ車にあこがれる気持ちは消えません。品質に対する信頼、リサイクルや安全性を追求する企業姿勢が、ユーザーのブランド忠誠心に反映します。
また、もっと感性よりのマーケティングもあります。 40年以上も前の設計であるイギリスの小さな車が今も根強い人気を保っています。後者ではいずれも、確たる企業哲学を十分に表現する、広い意味でのデザインが、戦略の基盤となるはずです。

商品とデザイン、パッケージ

現代女性の美しさを、顔だけで語ることができないのは当然です。彼女たちの「美容」は、もはや「化粧」ではなく、健康や体づくり、ライフスタイルにわたる概念でとらえなければならないのです。
商品における「デザイン」も、まったく同一に考えられるべきです。製品ができてからそれにかぶせる「化粧」がデザインであると考えたり、商品ができたあとでそれを入れる「箱」がパッケージであると考えていて、21世紀の市場はつかめるでしょうか?
ブランド・マーケティングにおいて、商品はすべて、企業の哲学や感性が形になって現れるものです。商品、パッケージ、物流のありかた、店舗の形態から店員の説明態度までが、ある種のメッセージを含む統合的なものでなければなりません。

株式会社ほしゆうの会社案内のために書いたテキストを
ご了承を得て掲載させていただいております。

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